FC2ブログ

メニューへ移動する


Home >> スポンサー広告 >> スポンサーサイト

Home >> toshokan >> かわいいひと

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

かわいいひと


「あの美人、アンタの彼女でしょ、なんとかしなさいよ」
「俺になんとか出来るんなら、とっくにしてると思わないか?」

その返事に答えはなかった。

 
 
 
かわいいひと 
 
 
 
 
柴崎麻子は今日も美人を振りまいている。
それは、生まれ持っての人柄もあるし、
いままで、色々とトラブルに巻き込まれてきた処世術の一つでもあるし、
情報部候補生という特性上、敵はあまり作りたくない、という
仕事の意図も含まれている。


柴崎が基地内から誘拐されて、後方支援部の男と同じ部屋の女が逮捕されてから3か月。
 
他人の噂も75日とはよく言ったものだ。
今では、その話題はなかったことのように扱われる。
本人も気にしていないふりはしているが、
ふりだけであることは、俺には十分わかっていた。
 

若い隊員が「柴崎さーん」と声をかけると、
いつもの完璧な笑顔を振りまいてはいるが、声をかけられた瞬間に
毎回、体が一瞬こわばっているのを俺は見逃さない。

今日は一般利用者向けに、図書館の庭でバザーを開いているため、
いつもにもまして人が多い。
また、イベントのために他館から応援に来ていたり、
広報誌のための取材の隊員も多い。
その中の一人が柴崎に対して、
写真いいですか?という声にも、
事件などなかったかのように
「高いわよ」と笑いながら撮らせている。

声をかけるほうもかけるほうだが、
受け入れるのかよ、と初めて見たときは思った。

今日の堂上班のシフトはバザーで人が多いこともあり、
図書館の警備についており、今日のバディ、堂上郁はその光景をはじめてみたのだろう

「あの美人、あんたの彼女でしょ、なんとかしなさいよ」
と俺にあきれた声をかけてきた。
「俺になんとかできるんなら、とっくにしてると思わないか?」
と返した言葉に返事はなかった。


自分の彼女の写真がいろいろなところで売られるのは何が目的であっても
面白くないし、それを実際に柴崎に、写真はやめとけよ、と伝えたこともある。

でも、そのたびに
「イベント毎に色んな写真が撮られるのに、こんな美人の写真が、
一枚もない方が逆におかしくない?
事件のことを忘れてる隊員やこれから入ってくる新入隊員に「なんで柴崎さんの写真ないんですか?」って
事件のことを蒸し返されるたびに、私いろいろな噂の的になるのよ。
そっちの方がよっぽど耐えられないわ」

と、わかるようなわからないような理屈を返される。

「柴崎って時々いじっぱりよね・・・」と、堂上郁はひとりごちて、
柴崎を眺めた瞬間、何かに感づいたように手塚に声をかけた。

「ねぇ、門のところのあれ、良化隊員じゃない?」
「え?」

一瞬でピリッとした空気になる中、郁が示した柴崎の先にある門を見る。
確かに、良化隊員の制服を着た男のようには見えるが、
あんなに堂々と一人で制服を着たまま、図書館の敷地内に入ろうとするだろうか。

「職質かけてみるか?」
「教官に指示を仰いだほうがよくない?」
「でも、一人で敷地内に入ってくるようなことがあるか?」
「それもそうよね・・・」

そういって、手塚は危険性はないと判断して近づく。
その人物まで20mくらいのところで気が付いた。
良化隊員の制服に似てはいるが、どうやら違うようだ。

色合いや形は似ているが、ロゴや細かいデティールは全然違う。
もう少し近づいてみてわかった。陸上自衛隊の訓練服だ。
 
ホッとしたのもつかの間、なぜ訓練服で図書館に・・・との疑問のもと、
手塚は職質をかけようとしたその瞬間。
その男は手前にいた女に声をかけた。 

「あの、柴崎さん!!」

柴崎は一瞬、肩がこわばったが、
そんなことは微塵も見せない笑顔で、その男の方向を向く。

「はい?」

まじまじとその男の顔をみて

「あぁ、いつもの!」と顔みしりである安心感からか肩の力が抜けた。
「このあいだの本、ちゃんと取りおいてますよ。人気作ですものね」
「はい、メールが届いたので、取りにきました。」

どうやら、頻度の高い利用者のようだ。
人気作の図書は順番待ちになる。
順番が来たら、その利用者へメールが届くシステムとなっており、待ち焦がれていた本を借りに、通勤の前後や休憩時間、
休日早朝に利用者がやってくるのはよくあることで
その類だろうと手塚はホッとして、郁に警備に戻るよう促した。

その瞬間

「あの、ずっと柴崎さんのことが気になっていました!よかったら、お友達になってもらえませんか?」

と、50m先でも余裕で届きそうな大きな告白が聞こえた。


隊員でも、手塚と柴崎が付き合っているのを知っているのは少数だ。
なんとなく二人の雰囲気が変わった?くらいは隊内でもわかるような
態度をとっていたつもりであるが、明言はしてこなかった、

もちろん、理由はある。

付き合いはじめたときに、手塚は堂上に、柴崎も自分の上長へ真剣交際だと報告をした。
報告する義務など、本来はもちろんないのだが、お互いが置かれている立場、
ありていに言えば、それぞれにファンが多いことはわかっていた。
アイドルでもなんでもないんだから、といえばそれまでだが、
二人が付き合い始めた、と知られると少なくともアイドル扱いしている
若い隊員は業務に支障が出るだろう、ということの予測もついた。
お互いの上長へ相談し、本人同士も話し合った結果、徐々にばれる方向で、
半年くらいかけて付き合っている噂を広めていこう、という方向性で双方納得した。
 

しかし、自分の彼女がフリーだと思われているのは、面白くないし、
ましてや告白されている場面を見るのはさらに面白くない。


さすがに割り込みにいこうとした瞬間、
凛とした声で柴崎が答えた。
「ごめんなさい」

目立つ告白だったから、周りはもちろん注目している。
そんななか極上の笑顔でつづけた。

「わたし、だいすきな人がいるんです。わたしのことを、これでもか、と大切にしてくれるひと。
 わたしの前でだけ愚痴を言ったり、拗ねたり、素直になれなかったり・・・・とってもかわいい人なんです。」

その声は決して大きくなかったけれど、
透き通ったその声は、手塚と郁のところまでしっかり届いた。
そして、まわりにいた人たちにも。

相手の男は多少ショックを受けた様子も感じられたが、
断られることも予想の範囲内だったのか
良い恋愛をされてるんですね、と柴崎に対してほがらかに笑って、
予約図書を借りてきます、と館内へ向かって歩き出した。


柴崎はそれを見送り、手塚と郁の方へ向いて、クスリと笑いかけ、そのまま持ち場へ戻った。 
 
 

「良い女だね、アンタの彼女は。」
隊内で柴崎に彼氏がいる、と広まるのも時間の問題だね、
と郁は手塚の心配を見透かしたように笑った。
 
 

真っ赤な顔のまま、「かわいいひと」は頷いた。 

 
 
 
 
 


了 
 

**************************************

 
 
「かわいいひと」は柴崎ではなく手塚、という話。
手柴すきだなー。

2018.6.25
スポンサーサイト




ページ先頭へ戻る


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。