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後ろ髪


それは大学の合格発表のときだった。

サークルのビラ配りに任命され、
朝も早くから合格発表を観に来ている受験生を対象に
そのビラを配っていた。


目の前を通り過ぎた受験生であろう彼女は、
ふわふわの長い髪と白い肌、よく似合うパステルカラーのワンピースを身にまとっていた。
母親らしき女性とならんで、受験票を片手に嬉しそうに話している様子はどうやら合格したらしい。

そんな彼女のふわふわの髪を、
なんとなく正門を出るまで目で追ってしまった。 
 


 

後ろ髪
 
 
 
 


 
彼の名前は西尾悠太。
文学部3回生で、所属サークルは遊び感覚でやっているテニスサークル。
それから、友達に誘われた「耳の聴こえない人のために、授業で先生が話していることを隣の席でノートに書いて伝える」という内申のためにやってる「ノートテイク」のボランティアのサークル。

というちょっと打算的で平凡な大学生である。

 
 

先日の合格発表で見た彼女のことがなんとなく頭の片隅にひっかかっていた頃だった。


そんな彼女を、
4月はいってすぐの「ノートテイク」の説明会で見つけたのだ。
彼女の姿を目に捕らえた刹那、心臓が浮くかと思った。

この説明会には、ノートテイクを必要とする人ではなく、
西尾のようなノートテイカーが多い説明会である。
てっきり彼女もテイカーだと思い、
説明書のプリントを読んでいる凛とした横顔に、すぐさま話かけた。
 

「きみ、合格発表の時、お母さんと一緒に来てたよね?ウチの大学にしたんだ。ノートテイクとか興味あるの!?」


そこまで言って、彼女が怪訝そうに見上げてきたので、いきなりで慣れ慣れしかったかな、失敗したかな、と不安がよきった。


しかし、それは杞憂に終わった。
彼女は、申し訳ないように髪を書き上げ、そこにかけられている補聴器を見せたのだ。


ショックだった。
  
 
 

そして、そのショックを受けたことが自分でショックだった。 
 

今まで、自分は健聴者と難聴者の差別なんてしていないつもりだった。
なのに今、一瞬腰がひけたのだ。
 
 
 
相手は慣れているのかごめんなさい。と目配せして前に向き直った。 
  
 
 

 
 
  

 
あれから二週間。
彼女のことを忘れられない自分に驚いている。
ファーストインパクトは美人に対する興味。
セカンドインパクトは難聴者だというショック。

このふたつをあわせて、彼女の印象は色んな意味で強く残っていた。
あのあと、何度かサークルで会う機会があり自己紹介と少しは言葉を交わすことができた。
彼女と言葉を交わすたびに、ちょっとずつ湧き上がる気持ちがあった。
彼女を反芻することが増えた。


 
そんな思いを抱えたまま、まだ春休みの某日、西尾は短期で入っている派遣の警備のバイトにいそしんでいた。
場所は吉祥寺の老舗デパートである。
一階を警備服を着てぐるぐる歩くだけのバイトだが、労働の割には時給が良いのでよくバイトに入っている。
  
 

なんとなく店内をくるくると警備していたら、
ふわり、と何度も反芻した長いふわふわの後ろ髪の女の子が
角を曲がったのを見た気がした。


思わず足早にそちらの方へ駆け、
その視界に、想い募らせていた彼女を霞めた瞬間には度肝を抜かれた。
  


どうしてこんなところで!?
 


と思ったが、大学から電車で20分。
そう遠い場所でもないから、居ても別段おかしくもない。

どうやらアクセサリーを買いにきたらしい。
ふらりと今、流行りのブランド店へと入っていった。

なんとなく彼女の動向が気になり、そちらの方へと西尾も足をむける。
どうやら指輪を見ているらしい、嬉しそうにウインドウを覗きこみ、連れの方へと顔をあげた。


そこでようやく連れの人間がいることに気がつく。

体格の良い男は30前後といったところだろうか、はじめは兄貴か何かかと思っていた。
けれども、その男がシンプルな指輪をいくつか指差し、店員にショーウィンドウから取り出してもらい、実際に彼女の指にはめている瞬間を見て、その淡い野望も打ちひしがれた。
 

 
さっきから組まれている腕や、
つながれたりしている手と、
なにより彼女の顔を見れば、
その男の彼女との関係は明白であり、胸が痛んだ。


 
気づかなかったのは一重に、
彼女ばかりに見とれていて、
その周辺への認識力が疎かになっていたからである。

   
 
 

 

 
結構本気だったのかもな。
 
 
 
 
  
 

 
まだ芽生えてないと思っていた恋を自覚し、西尾は思わず苦笑した。 

 
 
はじめから勝算はなかったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
まだその姿を目にとめたい、
と未練がましく後ろ髪をひかれながら、

西尾は仕事を再開するべく、全く別の方向へと足をむけた。
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
*******************
 
「革命」読後一発目が原作パロディです。
そして、何故か小毬←第三者というシチュ。

何 こ れ (爆)
 
 
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