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さよならを歌う。


さよならを歌う。
今は遠いあのひとに。
懐かしい花を送る。
過去に生きたあのひとに。
 
 
 
 
さよならを歌う。 
 


 
 

 
 
 
 
 
白いワンピースははじめてママが手作りしてくれた服。
すごく気に入って、とても大事に着た。  


お気に入りの麦藁帽子は大好きなおばあちゃんが買ってくれたもの。
帽子のつばのところに黄色い大きな向日葵が咲いていて私に「良く似ている」と言って買ってくれた。


茶色の革靴はお兄ちゃんが見立ててくれたものだ。
今日の格好ととてもよくあっている、と秋口にはよく履いた。
 

黒のコートは冬のカナダから帰ってきたパパのお土産。 
ちょっと大人っぽかったね。と笑ったパパはすごく嬉しそうだった。
 
  

 
 
 
 
 
  

  
私は今、そのすべてを置いて旅立つ。
何ひとつ持っていけはしないのだと知っている。 

 

どうして。
声は聞こえてるのに、触れることも出来ない。

みんな「私」に色々話しかける。
涙を流しながら。
 
 
 
 

ねえ、私はここにいるんだよ? 
 

 
 
 
叫んでも叫んでも彼らには届いてない。
 
 
 
 

 
 

隣に浮いていた男が声をかける。
 
 
 
『・・・もう。いいかな?』

それには答えない。


『私は、もう生きることは出来ないの?』


困ったように彼は笑った。


『魂がその世に存在しないんだよ。すでにこっちの世界の住人だ、君は。』

そんなことはわかってる。でも。

『私、まだ7年も生きてないわ。』

彼はあきれたようにため息をついた。

『人はいずれ死ぬんだ。それが遅いか早いかの違いだよ。』
 

納得がいかない。
小学校の入学式は明日だったのに。

『私、知ってるわ。あなたのこと。』
 

不思議そうに彼はふりかえった。

『そうかい?』
 
昔、パパが教えてくれたのよ。 

『死神って言うんでしょう?人の命をとりにくるのよ。』

彼は不敵に笑った。

『人によっては天使とも呼ぶみたいだけどね。』
  
 

彼の意外な返答に、思わず虚につかれた態度になった。 

『死神と天使は一緒のもの?』

『そんなの僕にきかれたって知るわけがないよ。
人間が勝手にそう読んでるだけだ。僕は君みたいに、あっちで魂を無くした人をこっちの世界に案内するのが仕事なんだ。それだけだよ。』
 
 
 
『ふーん』

『さぁ、もうお別れはいいかい?そろそろ行きたいんだけど。』

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


『・・・・・・・そうね。もうちょっと待って。』 
 
  
 
 

 
 
覚えて間もない歌を歌う。
それは、誰しもがこれからの人生のはじめを祝う歌だったはずの歌。 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
さよならを歌う。
今は遠いあのひとたちに。
懐かしい花を送る。
これからを生きるあのひとたちに。

 
 
  
 
 
 

 
*********************
短く輝いた命。
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  •  #
  • 2012-03-17(Sat) 20:08:50
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