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心中お察しする


「ううーきょーかーん」

23時40分。

ふらふらしながら歩く笠原郁の右手をひっぱり帰路につくのは、もちろん彼女の教官である。

「誰だ。笠原に飲ましたヤツは・・・」
堂上はうんざりしながら後ろを振り返る。

親睦会と称して休みが合う人間が、春先から夏にかけての間に(この時期は怒涛のイベント等が終了して、割と暇な時期である。)飲みに出ることはそう珍しくも無い。

特に同じ班だとほぼ一緒に休みが回ってくるので、自然に班のメンバー同士で呑みにいくことだって増える。

今回はもうちょっと規模が大きいものだった。
参加者は悠に20人はくだらなかっただろう。
もちろんそれだけ集まれば2次会、3次会へと流れるものだが、その3次会に行く奴らから離脱して彼らは帰路についている。

彼らとは堂上を筆頭に、酔いつぶれている笠原、それを口実に出てきた堂上、小牧。
それから、この3人がいるのだから帰らざるをえない手塚。
あとは数人の先輩だ。
歳のせいか三次会まで行く元気はなかったらしい。


「俺じゃないですよー。何回も止めましたもん」
とは手塚。

いつもより砕けた口調になっているのは酒が回っているせいだろう。

兄のこともあって愚痴モードに入っていたことから考えても相当な量をあおっている。

いくら手塚でも同じ轍は踏まないだろう。
ポカリでも呑まない限りは、明日になったらケロッとしていることが予想できる。

「お前か。」
と堂上は小牧の方を見る。

こっちは全然酔った様子はなさそうだ。

「いやー。笠原さんって面白いからつい・・・ねぇ?」

小牧は正直そこまでお酒を勧めたわけではないのだが、どうやら自分のペースで郁をつきあわせていたらしく・・・。

酒があまり強くない郁のことだ、潰れるのはわけなかった。

おまえなぁ、堂上が文句を次ごうとしたとたん、左手が急に重くなった。

郁が座り込んだのだ。



「もう、らめれすー!」

「駄目じゃない。ほら、あと200mくらいだ。しっかり歩け。」
 
 

堂上もなんとか宥めすかして歩かせようとするが、郁はてこでも動かないといった風情で座りこんだままだ。


あげく、
「むりれすー」


と完全に呂律が回ってない状態で堂上を見上げる。



「無理じゃない、罰則腕立てくらいたいか!」
「いやれすー!」


拉致があかない。それどころか堂上もそれなりにお酒が回っている。

本人達は真剣でも、傍からみたらえらく面白い光景だ。
小牧なんかには早速、上戸を入れてしまった。

ギッとにらむと流石の小牧も
「ごめ・・・・面白すぎるよ、笠原さん」
先帰っとくよ、と言い残してさっさと歩いていってしまった。


他に一緒に2次会で上がってきた人間も同様だ。
「なんたって郁の王子様」にまかせておくが一番だ、と先輩達も苦笑しながら行ってしまった。


残ったのは帰りそびれた手塚ただひとりだ。


このまま座りこまれていたら日を超えてしまう。


酔いがさめるまで待とうかとも思ったが、明日は普通に朝からシフトが入っている。あまり遅くなるのは賢明ではない。


「仕方ない、おとなしくしとけよ」と堂上は二、三言、郁に言い含め、ひょい、と郁の身体を腰から担ぎ上げて肩にのせる。


身長さをモノともさせないのは流石「図書隊」である。
同じ身長でも身体つきの違う男なら、こうやすやすとは持ちあがらなかっただろう。
予想していた体重より大分軽かったせいか堂上は少し拍子抜けしたようだった。


「うわー、きょーかんちからもちー」
「おとなしくしとけって言っただろ、コラ、動くな!」


そのまま200mほどの距離を急ぎ足で戻り、寮の入り口のところで郁を降ろした。


「明日遅刻するなよ。」

と堂上は郁の頭をぐしゃりと混ぜて、手塚に

「同僚の面倒は最後までみるもんだ」と残してから男子寮へ戻っていった。
 
 
 
 
  

「てづかー。へやまでつれていってよー。」

「アホか。」

 
まさかこのまま女子寮に乗り込むわけにもいかない。
しかし、後をまかせられた手前、放っていくわけにもいかない。


仕方なく0時手前ではあったが、柴崎に電話して引き取りに来てもらうことにする。



柴崎は3コール目で出た。
「アンタ、何時だと思ってんのよ!」

開口一番文句を言われるのはこの際仕方ない。
 

「笠原が潰れてるからさ、お前、寮の入り口まで向かえに来てくれないか?」

返答は実にあっさりしていた。
「あー、そういうこと。」

しかし次につむいだ言葉は、さすが柴崎だ。



「で、いくら払う?」

「お前、金とるのかよ!」



冗談よ、と電話口で笑い声が聞こえる。

「それにしてもアンタも笠原連れ帰るなんて大変だったわねー。」
「いや、つれて帰ってきたのは堂上教官だ。」
 
 
 
 
  

郁は上の空で、柴崎相手に喋っている手塚の話をきいていた。

 
 
 

始めは何の話かと思ったが、どうやら自分の話らしい。
 

あれ?そういえば飲み会に参加してたような・・・
違う、堂上教官が「こっちは女もいるから帰る」とか言い出して・・・・

なんとなく朧げながらにも記憶がよみがえってくる。
 

記憶を辿ろうとして
 
 
うわー、なんでこんな頭痛いの!? と激しい頭痛にようやく気づく。


そんな思考の中、ふらつく頭をなんとか支えて郁はふと思う。 
  
 
 


そういや堂上が腰から肩へ担ぎ上げられて・・・連れて帰ってこられたような?
ちょ、ちょっと待って、じゃあ思いっきり肌密着ってえ、え?
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
「うおあっ!?」
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
手塚が叫んだのはすぐ後である。
 
 

「え。手塚!?どうしたの!?」
 
 

電話越しの柴崎は、それから1分もたたないうちにホールまで郁を迎えに来た。

 
そこで柴崎が目にしたのは、ごろりとホールに転がる手塚の身体。


何か呻いていたるような手塚に手をかしてやって、それでなんとか起き上がった。


「何があったのよ?」



黙っていようかとも思ったが、柴崎はどうせしつこく知りたがるだろう。
仕方が無いので手塚は、ありのままを言った。
 
 
  
 
 
 

「コイツ、急に投げ飛ばしやがった。」
「・・・・・・あぁ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
妙に納得したのは既に郁に前科があるせいだろう。
 
 
 
 


まさかの不覚である。

ろくに受身もとれない状態だったがそれでもなんとか態勢は保てた。


しかし背中をホールの段差にぶつけている。あとがどうなるかは考えただけで痛かった。
柴崎と携帯で話していた時のことだったから、携帯も何処かに飛んだはずだ。コレはあとで探すとしよう。
 

「・・・・・・・・・・・・・・オイ、笠原。」
 

ようやく振り返って郁に声をかけた手塚だったが、時、既に遅し。

いきなりの運動のせいだろう、確実に酔い潰れていた。
 
 
 

「・・・・・心中お察しするわ。」
 
 
 
 

 
柴崎が哀れんだように手塚を見上げた。 

「なんで俺、こんなヤツと給料一緒なんだろうな。」

呆然と言い放った手塚である。


柴崎は湿布張ったほうがいいわよ、と手塚の背中を2、3度たたいて、郁の身体の下に肩をすべりこませ、ずるずると自分達の部屋までひっぱっていった。
 
 
 
 
0時5分。

 
 
 
 
 

手塚は壊れた携帯を見つけ、コレは笠原に弁償させよう、と心に決めて医務室にむかったのだった。



***************
8月7日 アップ



8月26日改。

推敲無しで載せていたので、こっそり書き直しです。
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